視野検査の中でも今回は静的自動視野検査のお話しです。
自動視野計はスタートボタンを押すだけなので、大した手技は必要ないと思っていませんか?
そう思っていた方は是非、僕のブログを読み漁って考えを改めて下さい。
視野検査は自動で行われるため、機械が上手く測れるように患者を誘導しないといけません。
5-10分間行われる過酷な検査なので、最も快適な環境を作ってあげないといけません。
一気に視野検査の準備や説明について話すと長くなるので、何回かに分けてお話しします。
今回は検査を始める前の準備や注意点をお話ししたいと思います。
視野計の立ち上げ
ハンフリー視野計とコーワ視野計は輝度調整があるので暗室にしないと上手く立ち上がってくれません。
オクトパス視野計は検査直前に輝度調整を行うので、立ち上げ時の明るさはあまり関係ありません。
ハンフリー視野計には付属の黒い変圧器が付いています。
これは台を上下する時の電力を補うための物です。
過去に台が上下しなかった事例があり、現在では全機種についています。
これがなくても日本では十分に動くことが確認されており、必ず繋げる必要はありません。
変圧器があったら、変圧器を介してコンセントに繋げるくらいの認識で大丈夫です。
暗室にして立ち上げると、立ち上がるまでに数分かかります。
視野計が立ち上がってホーム画面になったら明るくして大丈夫です。
患者データ入力
ハンフリー視野計のホーム画面には検査プログラムのボタンが並んでいます。
このボタンの並びはカスタマイズできるので、施設によって異なります。
検査するプログラムを間違えないように選びます。
ハンフリー視野計の場合、計測プログラム選ぶと右眼か左眼のどちらを計測するのか選びます。
次に、患者データ入力画面に移動します。
タッチパネル注意点
タッチパネルはボールペン等で突っつくとモニターのセンサーが痛むので指でタッチしましょう
視野検査を行うにあたって大事な入力事項は以下の項目です。
ID、名前、性別、生年月日、屈折、視力
患者情報入力での注意点
IDと生年月日は絶対にI間違えないこと
視野データはIDによって管理されています。
また、視野感度は年齢別正常値と比較するので、生年月日を間違えると致命的です。
IDは間違えた場合変えることができません。
和暦→西暦変換の豆知識
大正 + 11 = 西暦
昭和 + 25 = 西暦
平成 + 88 = 西暦
例1)昭和47年 47+25=1972年
例2)平成15年 15+88=2003年
メイン画面の入力内容は最低限の情報だけなので、矯正レンズや視力などを追加します。
特に結果に影響を与えませんが、プリントアウトした結果に反映されるので、情報になります。
個人的に、コメントの所にIOL 眼の場合は IOL と入力するようにしています。
マルチフォーカル IOL の患者は mIOL と入れておくと次の検査員への情報になります。
一度視野検査をして記録が残っている場合、一から再入力するよりは呼び戻した方がミスは減ります。
呼び戻すと前回の入力が反映されているので入力が楽でもあります。
矯正レンズの設定
ハンフリー視野計などドームに視標を呈示する検査では近見に合わせた矯正が必要です。
40歳未満の若年者であれば近見加入は考慮する必要がありませんが、それ以上では加入が必要です。
年代別加入度数
40歳未満 ・・・ 加入必要なし
40~44歳 ・・・ +1.00 D add
45~49歳 ・・・ +1.50 D add
50~54歳 ・・・ +2.00 D add
55~59歳 ・・・ +2.50 D add
60歳以上 ・・・ +3.00 D add
眼内レンズ挿入眼 ・・・ +3.00 add
よく教科書に書いてある加入度数はこんな感じです。
覚えれば楽勝ですが、不安な方はハンフリーの自動計算機能を使ってください。
レンズ度数を入力する画面で「シヨウレンズノジドウケイサン」というボタンを押します。
次に遠方の矯正レンズ度数を入力すると、生年月日をもとに自動で計算してくれます。
この際、1.00D未満の乱視度数などは等価球面度数に換算されます。
教科書では近見加入は+3Dが多いですが、ハンフリーでは厳密に+3.25Dとしていますので若干の差があります。
1つだけ注意点があります。
IOL眼は年齢に関係なく+3D加入しないといけませんが、60歳未満だと年代別の加入度数が適応されてしまいます。
IOL眼は年齢に関係なく+3D加入であることを忘れないでください。
因みにですが、乱視度数の符号は変える必要が無いのでそのまま入力して使用します。
患者の呼び入れ
患者を誘導する場合は足元に注意しましょう。
視野検査室は暗いので、視野異常がある方は更に見づらくなります。
ペンライトなどを持っていたら足元を照らしてあげましょう。
また、床のコードなども見えない方が多いので、テープでしっかりとめてひっかからないようにしましょう。
椅子もお座りくださいと言うよりは、位置と背もたれの有無までしっかり伝えましょう。
非検査眼のガーゼ遮蔽
緊張している時はガーゼを付け忘れることがあります。
いつも右眼から検査するので、左眼にガーゼを貼ると思います。
時々左眼から行いたい旨を申告してくる患者さんもいますし、医師からの指示もあります。
ハンフリー視野計では左右眼が間違っていても検査が進むので、検査眼の順番を変えた時は要注意です。
ガーゼは剥がれないようにしっかり貼り付けます。
特に鼻側が汗で剥がれて浮いてくると、両眼での視野になってしまうので、やり直しです。
鼻側は特に念入りに貼りましょう。
下方の隙間は極力ない方が良いですが、30°内の視野計測では多少隙間がっても計測には問題ありません。
お化粧が濃い方や皮脂が多い方は、遠慮せずに少し拭き取りましょう。
途中でガーゼが剥がれてやり直すよりはましです。
必要があれば眼瞼挙上
眼瞼挙上は全員する必要はありません。
モニター上で目を確認した時に、通常の状態で瞳孔領域に上眼瞼がかかってしまう方だけで十分です。
眼瞼挙上の必要がない方に眼瞼挙上をすると、瞬目が不自然になり検査に集中できなくなります。
近年ではプロスタグランジン製剤を使用している方が殆どなので、殆どの患者さんの睫毛は多毛です。
睫毛がかなり瞳孔領域にかかる場合、上眼瞼にテープを貼り瞼を少し反転させます。
台の高さ・目の位置合わせ
検査の中で最も重要なのは台の高さの調整です。
何故なら、同じ姿勢を5分から10分保持するからです。
台の高さは、はじめに検者側で大雑把に合わせます。
高さ調整のコツ
座った時の姿勢をさりげなくみる
猫背気味の方→やや猫背気味に合わせる
背筋がビシッとしている方→真っすぐに合わせる
眼の位置を中心に合わせてから、
「こちらの方でおおまかに合わせました。もう少し高くした方が楽ですか?低くした方が楽ですか?」
とYes or No で答えられないように聞きましょう。
なぜかというと、「台の高さは大丈夫ですか?」と聞くと、ほぼ100%の方が「はい」と答えます。
患者さんは遠慮がちですので多少きつくても我慢する傾向があります。
そのため、患者さんから「この高さで大丈夫です」と返事が返ってきても必ず、
「約5分以上この姿勢を保持することになりますが大丈夫でしょうか?」
と念入りに聞きましょう。
こうすることによって患者さんが少しでも楽な姿勢になるように答えてくれます。
レンズ位置の確認
そして最後にレンズ位置の設定です。
レンズと眼の距離は12mmの時にそのレンズの度数の威力を発揮します。
遠かったり近すぎたりすると矯正度数が変わります。
また、遠い場合レンズフォルダーの形がそのまま視野検査結果に反映されてしまいます。
そういった患者さんの視野は下半分が輪状に感度低下を示してしまいます。
どれくらいの距離か見当がつかない方は、メガネをかけている方を真横から見てみて下さい。
その距離がだいたい12mmです。
左眼の検査をするときは、自分が立っている位置からだとレンズと眼の距離が確認できません。
しっかり反対側まで回って距離を確認しましょう。
レンズは2枚しか入らないので、3枚必要な場合は2枚でおさまるように近似値を計算しましょう。
レンズを入れる時は球面・乱視に拘わらず強い度数が手前(患者側)になるように挿入します。
さいごの確認は、患者の背後に周り、体が真っすぐになっているか確認です。
姿勢が悪いと検査結果に影響しますので必ず最終チェックを。
さいごに
今回は、静的視野計の準備について細かく説明いたしました。
臨床でも研究でも視野検査ばかりやっているので、色々と細かくなってしまいました。
次の記事では自動視野計の説明などを詳しくお話ししたいと思います。
前回は視野検査前の準備についてお話ししました。
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