前回は視野検査前の準備についてお話ししました。
視野検査の中でも今回は静的自動視野検査のお話しです。自動視野計はスタートボタンを押すだけなので、大した手技は必要ないと思っていませんか?そう思っていた方は是非、僕のブログを読み漁って考えを改めて下さい。視野検査は自動で行われ[…]
今回は視野検査の説明についてお話ししたいと思います。
ハンフリー含め静的視野検査は自動で行われるから注意することなんてないでしょ?
と思っている方がたまにいます。
しかし、自動だからこそ患者側が機械に合わせるように説明し導かないといけません。
また検査中に上手くできていなかったら上手くできるように導かないといけません。
何故なら、視野検査の結果で治療方針の変更や手術適応など大きく左右されるからです。
検査前の説明で必ず含めなくてはいけない内容は以下の3つ
1.目線は固視灯から動かさない
2.瞬きを我慢しない
3.何となくでも見えたらボタンを押す
それでは一つ一つ詳しく話していこうと思います。
最後に具体的にどんなセリフを言っているか例としてご紹介します。
固視灯から目を動かさない
緑内障患者さんに向けた視野検査のコツでも述べましたが、最も重要な事です。
緑内障と診断された方は必ず行う検査の一つにハンフリー視野検査があります。正確には、ハンフリー視野検査ではなく静的視野検査と言います。ハンフリーとはカールツァイス社が生産している視野計の名前です。世界中で最も使用されているので[…]
静的視野検査では定められた測定点に何度か視標を呈示して閾値を計測します。
そのため、検査中に視線が動いてしまうと同じ測定点に視標が呈示できなくなります。
その結果、前回は正常だった部位の感度低下が誤って検出されてしまいます。
また反対に異常だった部位が正常と判定されてしまうことがあります。
ついつい視標を探したり確認したくて視線を動かしてしまう方がいます。
そういった方にはこういう事が起きて正しい検査結果が得られなくなると念を押して言いましょう。
何回か言ってもキョロキョロが直らない方が極稀にいます。
そういった患者さんは何度言っても直りませんので諦めましょう。
他覚的に評価できるOCTなどで経過を診る方が良いです。
瞬きを我慢しない
人間は通常は3秒に1回くらいの割合で瞬きをします。
瞬きには、角膜表面の涙液を安定させる働きがあります。
さらに、視界をリセットするという大事な働きもあります。
何故視界をリセットさせることが大事かというと、ずっと目を開けて集中していると、集中して見ている部位以外は脳が抑制してしまうからです。
よく集中していて周りが見えていないといった言い回しを聞くと思います。
これは実際に起こることで、視野検査中にも起こります。
固視灯を物凄く集中して見ていると瞬きが減り、視界がリセットされなくなり周辺視野に抑制がかかるのです。
そのため、患者さんには視野検査中は瞬きを我慢せず、意識的に瞬きをしてくださいと伝えると良いです。
もしこのような現象を訴える患者さんがあたら、瞬きをすることによって解消されますと言いましょう。
何となく見えたら押す
患者さんの傾向として、確実に見えた視標しか押さないという傾向があります。
そうすると正確な閾値計測ができません。
なぜなら、閾値は50%の確率で見えたもので決定されるからです。
そのため、なんとなく見えた視標に対し反応しないと閾値が少し悪く出てしまいます。
ハンフリー視野計で使用されているSITAというアルゴリズムでは、視覚確率曲線をもとに閾値を推定します。
ちょっと細かい話になるのですが、実際に詳細な閾値を計測しているのではなく、ある程度の予測範囲内に閾値が収まったら閾値が決定されます。
予測の範囲内に収まらないと、その測定点は全点閾値法で再計測するようになっています。
すなわち、50%の確率でしか見えない視標まで計測が行われていないと正しい閾値が計測されないだけでなく、測定時間も長くなってしまうのです。
たまに「薄くて見えているか分からないような光も押しちゃったけど大丈夫でしょうか?」
と仰る患者さんがいると思いますが、そうおっしゃる方は上手く閾値が計測された証拠です。
視野検査には慣れが必要ですが、患者さんには何となくでも見えたらボタンを押すように伝えましょう。
その他の説明事項
以下の内容は全員に説明する必要はありませんが、必要に応じてお伝えすると良いと思います。
24-2か10-2について
視野の状態によっては、周辺視野まで測る24-2と中心視野を測る10-2を交互に計測する患者さんもいます。
24-2では結構周辺まで視標が呈示されますが、10-2では固視灯近辺にしか視標は出ません。
そのため、24-2を計測するときは結構周辺まで視標が出ることを伝えましょう。
反対に、10-2を計測するときは固視等近辺に視標がでるので、周辺には視標が出ないと伝えましょう。
何も言わずにやると10-2を行った患者さんが「周辺で全く見えなかったのですが悪くなったのでしょうか?」と心配する方もいます。
測定時間
大まかな測定時間をお伝えするとやる気が出る方もいます。
逆に、「そんなにかかるの?」とやる気を無くされる方もいます。
そのため、おおまかな時間をお伝えするくらいで良いです。
参考までに、ハンフリー視野計のSITA-Standard で計測した場合の時間です。
24-2 → 5~6分 (長くて8分)
20-2 → 6~7分 (長くて9分)
10-2 → 6~8分 (長くて10分)
前回の結果がある場合は前回の時間を参考にすると良いです。
検査は途中で止められる
患者さんによっては極度に緊張したり、姿勢維持が困難だったりして検査途中で休憩を要する方もいます。
また、咳やくしゃみなどをしたくなる方もいます。
検査中に急に顔を外されたら検査をやり直さないといけません。
もし途中で顔を外す場合はボタンを押しっぱなしにすると患者側で検査を一時中断できる旨を伝えるのも良いでしょう。
しかし、途中で中断ばかりされてしまうと予約が押してしまうので、必要と思われる患者さんだけに言うようにしましょう。
前回の結果で偽陽性が高かった場合
偽陽性が高いということは、実際に見えていないにも拘わらずボタンを押していることを意味します。
今日はハンフリー視野計の信頼性指標の3つ固視不良 Fixation Loss: FL偽証性 False Positive: FP偽陰性 False Negative: FNを復習したいと思います。[…]
偽陽性が高いと擬似的に結果が良く出てしまい正しい結果が得られません。
そういった患者さんには、
「薄くても明るくても見えた光だけボタンを押してください」
「どんなに目が良くてもは半分近くは見えないようになっています」
といった声かけをすると効果的です。
実際の説明の例
最後に実際にひらちゃんが視野検査を行う時に言っているセリフをご紹介します。
これから視野の検査を行います。(10-2の場合:今日は狭い範囲を測るので、真ん中のオレンジ色の光の周辺に光が出ます)。検査中は今見ているオレンジ色の光から目線を動かさないでください。
検査が始まると、色々な明るさの光がドーム内の色々なところにランダムに出てきます。真ん中のオレンジ色の光を見続けながら、周辺に出てくる光がわかったらその都度ボタンを押してください。
検査中に瞬きを我慢するとかえって見づらくなったりするので、我慢せずに意識的に瞬きをしながら検査してください。
周りに出る光は明るい光から薄暗い光まで色々な明るさの光が出ます。何となくでも光を感じたらボタンを押してください。
それでは始めます。
これはあくまでも代表的なセリフです。
患者さんによってプラスαのセリフを付け加えると良いと思います。
何回か検査している人でもなるべく言うように心がけましょう。
何故なら、視野検査は3,4カ月に1回くらいの頻度で行うものですから、全員が全員完璧にやり方を覚えているわけでもありません。
また前回の検者の説明が不十分であることも考えられます。
機械が思うように検査できるようにしっかり説明をしましょう。
さいごに
今回は視野検査の説明についてお話ししました。
患者さんに言いたいことがいっぱいあっても、2つか3つくらいに納めましょう。
そんなに多くの事を言ったも覚えられませんからね。
明日からの臨床に役立てて頂けたら幸いです。
次回は検査中の注意事項についてお話ししたいと思います。
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