医療従事者の病院実習は皆さん登竜門ですよね。
勿論僕も学生時代の病院実習を経験しましたし、実習生を受け入れる指導者も体験しました。
教員として実習生を送り出す立場も体験しましたし、海外で外国人フェローも少し指導しました。
今回の記事では今までの豊富な経験を生かして実習生と指導者の両方の立場から意見を述べたいと思います。
時代というのは常に動いているので、世代が違えば価値観も違います。
結論は、実習生である若者の価値観と昭和・平成を生き抜いてきた指導者の価値観の両方を理解することが大事です。
世代が違うのでお互いが上手く付き合う努力をするのが肝だと思います。
まずは実習生としての方の立場に立って考えてみます。
病院実習の心構え(実習生の目線)
あいさつと笑顔
昔はわりと平和な世の中だったので、近所の人や身の回りの人と距離が近かったです。
しかし時代は変わり個人情報等の関係から、誰が隣に住んでいるかも分からない時代になりました。
そういった環境で育ってきた方達は挨拶すらしなくなりました。
しかし、社会に出ればそんなことはありません。
お互いが気持ちよく働けるように、そしてお互いが認識し合えるように挨拶は最低限出来るようにしましょう。
院内で働いている人は皆さん仲間ですから、知らない方でも挨拶することを心がけましょう。
スタッフだけではなく、患者さんにも「こんにちは」「お疲れ様でした」などしっかり言えるようになりましょう。
人の第一印象は初対面の印象で決まります。
少し軟らかい表情で挨拶ができたらそれだけで好印象です。
たまにバイト感覚が抜けていない学生がいて検査中や終了後に患者さんに「ありがとうございました」という方がいます。
我々は医療を提供している側なのでこの挨拶は不適切かなと思いますので気を付けて下さい。
手技よりも先に座学
ぶつけ本番で患者さんを検査して覚えていこうという考えは今すぐ捨てましょう。
勿論患者さんからは教科書よりも学ぶことは多いです。
しかし、何が正常で何が異常で、この疾患を除外するために必要な検査はこれだ、といった教科書の知識までは患者さんから学べません。
また、緊張すると普段の力の半分も出せません。
うろ覚え程度の知識だといざ患者さんを目の前にした時にフリーズするでしょう。
座学による知識は自分を守るためにも大事なものになってきます。
時間のある時にコツコツと勉強して知識を身に付けておきましょう。
いざ現場に出た時に点と点が沢山つながって物凄く成長を感じられます。
今まで数多くの学生を見てきましたが、知識がある人は実技の上達も早いですし、自発的に先に進んでいきます。
その一方で薄っぺらい知識の学生は、与えられたことはこなすけど、応用が利かない感じがします。
ある程度の精神論は覚悟しろ
平成の終わりや昭和を生きてきた先輩方は結構理不尽な環境でも暗黙の了解で生き抜いてきました。
こんなことは後世に引き継いではいけないという志をもった先輩が担当になれば良いですがそうもいきません。
社会人になってから一カ所でしか経験したことない方や、幅広い分野で仕事をしていない方がいます。
そういった方は自分が体験した理不尽さが正しいと思い押し付けてくるでしょう。
このような先輩が指導者になったらハズレです。
しかしそこで諦めないでください。
病院実習は一時だけです。
そこに就職しなければ良いだけです。
その一時を乗り切る精神的な強さと体力は大事です。
僕は海外を含め10カ所以上で仕事をしてきました。
世の中には自分が心底尊敬できる人が必ずいます。
ちょっと変わった先輩が指導者になった場足、その場は精神論で乗り切って終わったら縁を切りましょう。
そういった病院は実習先から除外した方が今後のためにもよいので、学校に帰ったら教員に報告してくださいね。
体調・食事管理
結構気を付けなくてはいけないのが体調・食事管理です。
教員やっていた時、毎年何かしら体調不良にやられる学生がいました。
体調を崩すことは人間ですから当たり前ですが、明らかに自分の管理が甘くてなった体調不良は自分の責任です。
夜遅くまでレポート → 寝不足 → 暑さにやられる → 食欲不振 → ダウン
という流れが王道でした。
やはり睡眠が一番大事になってくるので、睡眠を削るような生活リズムを作ってはいけません。
長い昼休みの隙間時間に課題をこなしたり、早寝早起きして電車が空いている早朝に移動して空いた時間でこなす。
このように時間を上手く使い体力を消耗しないように気を付けましょう。
それでも、食欲がなくなり朝食が食べれないなど悩んでいる方は、プロテインがおすすめです。
プロテインはカロリー抑え目で栄養素が結構入っているからです。
カロリーが低いので1杯や2敗では太らないので安心してください。
また最近のプロテインはジュース並みに美味しいです。
色々な味があるので美味しく朝の1杯をいただけます。
僕はミルクティー味とピーチティーを愛用しています。
シェイクした後にレンジで温めてホットで飲むこともできるがポイント!
腹持ちもそこそこ良いので低カロリーで充分な栄養補給ができます。
メモをとれ
当たり前ですが、意外にできていない人がいます。
義務教育ではないですし、指導者も患者さんを相手しないといけないので、同じことを何度も聞かれるとイラっとします。
また同じミスを繰り返すようですと患者さんに被害が及ぶので指導者も苦渋の策をとるでしょう。
その場で理解しきれない事だけではなく気になった事などもすべてメモに残しましょう。
メモを取るだけではなく必ず復習をしてください。
現場では色々な事で脳みそフル回転しているので、メモに残さないと忘れます。
またメモには個人情報は書かないこと。
万が一落とした時に大変なことになります。
休憩中はなるべく一人でひっそりと
実習先の病院に何としてでも就職したいからスタッフの方々と一緒に食べたい!
と思ってもなるべく一定の距離を置く方が良いでしょう。
最初だけ歓迎会も兼ねて皆で職員食堂に行きましょうという流れになることはあります。
そういったお誘いは最初のうちだけ出席する方が無難でしょう。
昼休みは結構貴重な時間で、精神的にも肉体的にも体を休めた方が良いです。
また慣れてきたら、この昼休みの時間を使って課題などをこなすと夜の睡眠時間を保つことができます。
お誘いを断りにくい時は、スタッフの皆さんと逆のお昼スタイルにすると良いですよ。
例えば、皆さんがお弁当を持参していて、休憩室で食べる場合、自分は食堂に行ったり弁当を買いに行ったりします。
反対に、皆さんが一緒に食堂に行きましょうとなる場合は弁当を持参します。
そうすると断りやすくなります。
SNSで病院のことはつぶやかないこと
SNSは匿名でやっていても身バレすることがあります。
誰が何処で繋がっているかわかりません。
またSNSだけではなく、居酒屋でお友達と気晴らしに飲んでいる時も気を付けて下さい。
隣のテーブルに座っている人が、あなたの愚痴をつぶやくかもしれません。
個人情報や病院・指導者の愚痴は家の中で友達と飲んで発散してください。
その友達も裏切ることがあるので、結局は言わないのが一番です。
身だしなみは常に心掛ける
あいさつの所でも述べましたが、人の印象は第一印象でほとんど決まります。
もっさーとして、ユニフォームも汗臭く、爪が長いような方と遭遇して、心惹かれる方はいないと思います。
毎回がっちりキメる必要はありませんが、周りの先輩方をみてそれ以下にならぬよう心がけましょう。
スタッフだけではなく、患者さんも同じような気持ちになると思います。
この件に関しては翌日から直ぐに変わることができるので、清潔感のある人を見習いましょう。
病院実習の心構え(指導者の目線)
手技は絶対に期待しない
指導者の皆さん、学生時代を思い出してください。
勿論優秀だった方もいるかもしれませんが、そんな方は一握りで、殆どの方はポンコツだったと思います。
自分はできたからと、自分を基準に考えるのは止めましょう。
今と昔では教育の方針も変わっていますし、勉強してきた量も違います。
毎回実習生を受け入れる時は自分自身に時間や精神的なゆとりがあるように心がけて下さい。
そうしないと落ち着いて一緒に考えてあげることはできません。
実習の目的は、臨床の現場がどういったものかを自覚させ、これから自分がどのように関係していくか考えさせる場です。
手技は就職した病院でみっちり教えてもらえばいい話しです。
実習では現場を大まかに体験させて学生に刺激を与える方法を考えて下さい。
「うちのやりかたは~」とか説明したところで実習生からしたらどうでもよい話しですからね。
毎日の実習ノート廃止
賛否両論あるかもしれませんが、僕はこれは週一くらいにしても良いのかなと思います。
毎日薄っぺらい内容を書かせるより、1週間の中で最も印象にのこった症例を徹底的に調べさせるという課題の方が今後に繋がるかなと思います。
まずは実習生自身が何かに興味を持つということが大事です。
与えられた課題などに興味が無かったら結局やっつけ仕事になり、頭に入らないでしょう。
やらせるというよりは、実習生自身に興味を持たせるのが最優先です。
学生を指導していて思ったのですが、目標を持った生徒は自走していき、物凄く成長します。
その反面、与えられた事しかできない生徒は、空いた時間を無駄に使っている印象でした。
大学や専門学校は義務教育ではなく、自発的に勉強したい人が集まっています。
そのため、課題を与えるのではなく、自分で課題にしたい症例を選ばせることが大事かなと思います。
それがあんまり大切な事でなくても自分で納得いくまでまとめさせる方が効果的です。
こちらから色々パスを出しても一向にやる気のない実習生はどうするの?と思うかもしれません。
そういった実習生は、基本的に放置で良いのかなと思っています。
義務教育ではないので。
できないことに絶対に怒らない
先ほどもお話ししましたが、実習生はポンコツが当たり前です。
今まで友達同士でしか検査したことない素人ですから、いざ患者さんを目の前にしてできなくなるのは当然です。
そういった時に指導者が見るべきところは、自習生がどこが上手くできていて、どこが失敗していたかです。
基本的に褒める必要はそんなにないと思いますが、出来ていた事と出来ていなかった事を明確に指摘することが大切です。
当たり前ですが、失敗したところばかりを指摘してしまいますと、自分を責めてしまいどんどん内向的になってしまいます。
また、後程お話しますが、3回くらいまでは同じミスや質問は許してあげましょう。
絶対に言ってはいけないセリフは「前にも言ったよね?」と問い詰めることです。
これを言うとお互いの距離は遠く離れてしまいます。
「じゃ、もう一回一緒に考えてみようか」など少し言葉と態度を変えてみてください。
相手にダメージを与えることなく2回目だよということを指摘できます。
基本的にイライラして厳しいことを言ってしまう時は忙しい時です。
実習生を受け入れる時はあまり忙しくならないようにして、自分自身をしっかりコントロールしましょう。
仕事や雑務は絶対にさせない
実習生はあくまで実習に来ているので、職場の戦力の一員にしてはいけません。
むしろ実習先に実習費を納めているわけですから、責任もって教育をしないといけません。
間違っても実習時間外の勉強会に参加させたり、掃除をさせたりしないように。
狭い世界ですし、情報化された世界なので、そんな噂は一気に広がります。
ブラックリストに載り、就職希望者は減る一方です。
3回ルール
僕が指導者のときはいつもこのルールを厳守していました。
陰でこっそり見守りながら、3回目でも良い結果が出せなかったら交代するルールです。
例えば、1回目で大それたことや遠回りしていても、3回目で結果を出せれば良しとします。
もし3回目でもちょっと診察室に持って行けないような結果の場合は交代します。
3回ルールの目的
・失敗から学ぶことが多いことを教える
・自分で完投する達成感を教える
・自分一人ではできないことがあることを実感させる
ついつい患者さんが可哀そうと思うかもしれませんが、身を持って体験することが一番勉強になります。
時間と心にゆとりのある患者さんを選ぶのが指導者の腕の見せ所です。
人間関係の厳しさではなく仕事の楽しさを教える
実習生が仕事の楽しさを感じるか否かは貴方の存在が全てです。
学生が臨床実習で成長して帰るか否かは “どこで実習をしたか” ではなく“だれと実習をしたか” です。
厳しさを教えてためになったなぁと感じる方は昭和を生き抜いてきた方の価値観です。
平成後期や令和を生き抜いてきた若者の価値観はもう違います。
この人と仕事すると収穫が沢山あるとか、自分にとって有益だ、など「効率重視」の価値観です。
「今のはここが良かったんだけど、次からこうするともっと良くなるかな」といったように、良いところを指摘しつつ、改善点もに指導してみてください。
生きている時代が違うので価値観が異なります。
そんなお互いが空気で感じ取れといっても一生涯価値観を共有できるわけがありません。
お互いの価値観に寄り添いながら仕事を教えると楽しさを発見してくれると思います。
さいごに
僕は臨床実習に行く前に緊急手術になりみんなより出遅れたのを覚えています。
しかし、運よく3カ所とも指導者に恵まれ、病院実習をきっかけにモチベーションが上がりました。
ご存知かもしれませんが、ベーチェット病で目が悪いので、暗闇の検査や眼位検査などは見えないので苦手です。
しかし周りの方々ができる範囲でやる気を引き出してくれたので、今でも研究者としてバリバリ働いています。
”どこで実習したか” ではなく ”誰と実習したか” がホント大事だなと今実感しています。
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