Goldmann視野計の視標速度どれぐらい?教科書の経験論ではなく科学的根拠から解説します【視能訓練士向け】

  • 2019年10月28日
  • 2023年12月15日
  • 視野
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ゴールドマン視野計(GP)を使った動的視野検査は実は海外では使用されません。

以前いたイギリス、今いるカナダでも見たことがありません。

それじゃ、周辺視野知りたい時どうしているのか?

一応ハンフリー視野計にも簡易的ですが Kinetic mode があります。

また、60-4 という周辺視野を計測する静的視野があるのでそれらが使用されています。

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OCTOPUS900 があれば半自動で計測を行っています。

そうは言っても、計測された結果がカルテに挟まっているのを見たことがないので殆ど行われません。

その一方で、日本では結構な頻度でゴールドマン視野計(GP)が稼働していて、視能訓練士の皆さんは大忙しだと思います。

検査をしていて、視標はどれくらいの速度で動かすべきか、疑問に思ったことありませんか?

今回は過去の論文に基づいて秒速何度くらいが良いのかまとめてみました。

総合的にまとめると、秒速3または4度より速めない方が良いということです。

Jonson CA, et al. 1987年

彼らは秒速6度を推奨しています。

PubMed

Duration, reliability, and sensitivity of kinetic thresholds…

使用した視野計は SQUID’s(自作の視野計)。

健常者3人を対象に、I4, I2, I1 の視標サイズを使い、秒速1、2、4、6、8度までの5段階計測。

それぞれの検査時間、イソプター面積の変化で最適な視標速度を検討しました。

その結果、

検査時間 → 視標速度が速くなるにつれて検査時間は短縮

イソプター面積 → 秒速6度より早くなるとイソプターが縮小

Limitations:

・最大で70度までしか計測されておらず、耳側視野の最周辺部の情報が含まれていない

・III4とI3の視標が計測されていない

・上鼻側と下耳側の2カ所しか計測されていない

・健常者3名しか計測されていない(統計学的な判定ができていない)

・reaction time が補正されていない

Wabbles B, et al. 2001年

PubMed

The recommended velocity of 2 degrees/s is often exceeded in…

彼らは秒速4度を推奨しています

使用した視野計は OCULUS社のTwinfield。

健常者12人を対象に、III4, I4, I2, I1 の視標サイズを使い、秒速1~7度まで、7段階計測。

それぞれのイソプター面積の変化で最適な視標速度を検討しました。

その結果、

III4とI4 → 視標速度に関係なくイソプターの面積は変わらず、

I2とI1 → 秒速5度より早くなるとイソプター面積が小さくなりました。

Limitations:

・最大で70度までしか計測されておらず、耳側視野の最周辺部の情報が含まれていない

・I3の視標が計測されていない

・健常者のみの検討

・たぶんreaction time が補正されていない

Hirasawa K, et al. 2016年

彼らは秒速3度または4度を推奨しています

PubMed

使用した視野計は Haag-Streit,社の OCTOPUS900。

健常若年者29名29眼を対象に、III4, I4, I3, I2, I1 の視標サイズを使い、秒速2、3、4、5、10度の5段階計測。

それぞれを2回ずつ計測し、検査時間、イソプター面積、ばらつきの3つの指標から最適な視標速度を検討しました。

その結果、

検査時間 → 視標速度が速くなるにつれて検査時間は短縮

イソプター面積 → 秒速4度でIII4とI4イソプターが縮小

ばらつき → 視標速度に関係なく一定

Limitations:

・上方60度と下方70度から周辺が計測されていない

・20歳代の健常若年者のみの検討

・reaction time が補正されていない

最適な視標速度は?

上記3つの論文では、正常且つ若年者でしか検討されていないので、万人に通用するとは言い切れません。

ただ、教科書に載っていた周辺部は秒速5度で動かすというのは少し速いかもしれません

健常若年者で検討したにも拘らず、秒速4度または5度より早くなるとイソプター面積が少し小さくなります。

高齢者や視野異常の程度が大きい方はもっとイソプターが小さくなると予想されます。

総合的に考えると、秒速3度または4度くらいが好ましいと言えるでしょう。

さいごに

ゴールドマン視野計(GP)の役割は、周辺視野がどうなっているか大まかに計測することです。

なのでそんなに細かいことは気にしないで良いのですが、視標速度は秒速3度または4度くらいと頭に入れておきましょう!

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