今日はハンフリー視野計の信頼性指標の3つ
固視不良 Fixation Loss: FL
偽証性 False Positive: FP
偽陰性 False Negative: FN
を復習したいと思います。
以前の記事で少し触れましたが、
ハンフリー視野計と言ったらSITAで計測するのが当たり前となっていると思います。
正式名称は Swedish Interactive Threshold Algorithm。
僕が一番最初に機械学習に触れたのはこのSITAの論文だっ[…]
今はSITAが主流になって20年近く経ちます。
実は古典的な全点閾値と今使っているSITAでは信頼性指標の内容が若干異なります。
古い教科書ではこの辺がアップデートされていないことがあります。
今回の記事で SITA の信頼性指標について復習しましょう。
今回の参考文献です。
We applied new methods which take available knowledge of vis…
固視不良 Fixation Loss (FL)
固視不良目的は、「視線が動いていないかを評価する」ことです。
全点閾値法もSITAも同じ原理を採用しています。
ハンフリーでは Mariotte盲点が15度耳側、1.5度下方の所にあると仮定しています。
全体の視標呈示の 5% (20回に1回)の割合で盲点に視標が呈示されます。
視標サイズは Goldmann III 、輝度は 最大視標輝度 10,000 asb (0dB) が呈示されます。
このような刺激方法を Heojil-Krakau法 とも言います。
固視不良の基準値は 20% 未満であり、20%以上になると××が付きます。
FL が 20% 以上の結果は信頼性なしと解析されます。
しかし、以前の記事でもご紹介しましたが、実際には本当に固視が悪いわけではありません。
偽陽性反応(見えていないのに間違えて反応)であることが多いです。
検査が始まり最初の段階で、1回だけカウントされない盲点の刺激が行われます。
もしこれに反応した場合、機械が自動で盲点の再チェックを行います。
以前の記事でも載せましたが、盲点の大きさと各視標サイズの関係です
これを見てお分かりの通り、約2~3度視線を動かしても固視不良として検出されません。
また、確率論で考えてみます。
例えば、2回の視標呈示に対し1回の割合(1/2)で目線が動く方がいるとします。
盲点の視標呈示が20回に1回なので(1/20)、見事にヒットする確率は2.5%(1/40)です。
理論的にも真の固視不良をコシフリョウで判断するのは難しいと個人的に思っています。
臨床家としては、固視が良いか悪いかは、コシフリョウではなくモニターで判断するのが最善策です。
ひらちゃんがイギリス留学時に行っていた研究では、視野検査の感度のばらつきに視線の動きはあまり関係していませんでした。
またコシフリョウ××には偽陽性が少しだけ関係していました。
The aim of this cross-sectional study was to evaluate the re…
臨床上、モニター上の固視が良ければこの固視不良の数値は無視して良いと思っています。
ただ、研究ではコシフリョウ 20% 以上のデータは除外しないといけない決まりみたいになっているので厄介です。
20% 未満にきちんと収束させるのが視能訓練士の腕の見せ所です。
偽陽性 False positive (FP)
偽の陽性反応、すなわち「見えていないのに反応する事」をいいます。
全点閾値法とSITAでは、基準値も計測方法も違います。
全点閾値法では、モーターの回転音だけで視標が出てないのに反応した比率で算出されます。
全視標呈示の約 3%の割合(約33回に1回)で呈示されます。
一般的に、信頼性のある結果は 33%未満 であり、比率が 33% を超えると××が表示されます。
この内容が載っている教科書は古い情報のままです。
それでは実際に SITA はどのような方法で計測されているのでしょうか?
全点閾値では実際に見えない視標輝度を呈示するという行為がありました。
しかし、SITAはヒトの反応速度をみて偽の陽性反応カウントしています。
参考文献にもかいてありますが、視標に対する応答速度は平均して 0.18秒から0.2秒 と言われています。
すなわち、これ以外の応答を偽の陽性反応としています。
論文上では、0.18秒から0.2秒より速い応答は偽陽性となると書いてあります。
しかし、それより遅い応答はカウントされているか定かではありません。
一般的に信頼性のある結果は 15%未満 であり、比率が 15% を超えると××が表示されます。
全体の視標呈示回数に対する、偽の応答回数で算出されるので、検査中のモニターには確率が表示されません。
プリントアウトされた結果を見ないとわかりません。
視野の専門家からすると、これは全くナンセンスだと思っています。
偽の陽性反応こそが視野検査結果のばらつきに一番影響を及ぼします。
リアルタイムに計算して表示することで、検査が上手くできているか検査中に評価できます。
極端な話しだと、信頼性指標は偽証性だけで良いんじゃないかと思っています。
結果を良く見せようと、見えていないのに出鱈目に検査を行う患者さんもいます。
ゲイズ設定が行われていれば、視標呈示と共にアイモニターが点滅します。
検者はこの点滅と応答のタイミングが合っているかを確認できます。
なんとなく応答が変だなと感じたら、被験者に予告することなく数秒間一時停止するとよいです。
その際に何度も反応がある場合、
「視標が出ていない時にもボタンを押しているので、見えたものだけボタン押してくださいね」
と注意するとよいと思います。。
偽陰性 False negative (FN)
偽の陰性反応、すなわち「見えているはずなのに反応しない事」をいいます。
全点閾値法とSITAでは、基準値は同じですが計測方法が違います。
全点閾値法では、正常・異常部位に関係なく、既に閾値が決まった測定点に対し、その閾値より 9dB 明るい視標を提示し、反応しなかった比率を表示しています
全視標呈示の約 3%の割合(33回に1回)で提示されます。
一般的に信頼性のある結果は 33% 未満であり、33%を超えると××が表示されます。
SITAはどのような方法で計測されているかというと、
正常または殆ど正常な感度を有する測定点に対し、その閾値よりも 20dB 明るい視標を呈示し、反応しなかった比率で表されます。
全視標呈示回数の10%の割合(10回に1回)で測定が行われます。
但し、視野異常の状態によって呈示回数は異なります。
一般的に信頼性のある結果はSITAでも 33% 未満であり、33%を超えると××が表示されます。
偽陰性の視標を呈示するには 20dB 以上の感度をもつ必要があります。
そのため、視野異常が進行した症例は偽陰性が計測できず NA と表示されます。
過去の報告では、
The increased frequencies of false-negative answers in eyes …
視野異常が進行すると、注意力が散漫な状態でなくても偽の陰性反応が生理的に増加することが証明されています。
そのため、現在ではそこまで厳しく評価はされていません。
特に研究の採用基準では緑内障患者を扱う場合 FN は無視されます。
しかし、正常者を扱う場合は無視することはできません。
SITA では正常部位または殆ど正常部位に視標を呈示しています。
そのため、視野異常が殆ど無いにも拘わらず、偽陰性がある場合、注意力散漫・眠気などを疑いましょう。
「とても明るい視標も見えたらボタン押してくださいね」など優しく再度説明してください。
眠そうな方は一時停止して廊下を歩いてもらうなどするとシャキっとします。
さいごに
今回はかなり基礎の内容をお話ししました。
教科書では簡単な原理と基準値しか書いていません。
ここまで細かく書いてないので、復習がてらちょっとした豆知識を習得して頂けたら幸いです。
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