臨床で使用されている視野計と言ったらハンフリー視野計 か OCTOPUS視野計 かと思います。
他にもいくつかありますが、今回はこの2つの代表的な機種を例に説明していきたいと思います。
授業の際に先生が視野計間で数値を単純に比較してはいけないと言っていたけど何でだっけ?
という方はさらっと復習がてらに読んで頂けたら幸いです。
先に結論を言うと以下の3点です。
比較してはいけない3つの理由
・正常眼のデータベースが異なる
・最大視標輝度 (0dB) が異なる
・計測アルゴリズムが違う
それでは少し詳しくお話ししていきましょう。
正常眼データベースの違い
皆さんは視野検査結果を見る時に何を見ますか?
MD値だと思います。
実際にMD値だけではいけないのですが、MD値を見ればだいたいの視野異常の程度が分かりますよね。
このMD値は何を基に算出されているか分かりますか?
それは、各年代の正常人のデータを基に計算されています。
正常者なら皆同じ感度だし視野計間で比較しても良くないか?
と思うかもしれませんが、計測された人達によって統計学的にちょっとした違いが生じてしまうのです。
一番良い方法は、世界中の正常者のデータを計測して全部の機種がそのデータを共有することで。
しかし、世界中の正常者を計測するのには時間と費用がかかり合理的ではありません。
そのため、世界中の正常者の中からある一定量の正常者を選んで計測し、その値を正常値とします。
このとき、世界中の正常者が母集団に相当し、選ばれた正常者が標本に相当します。
基本的に母集団の分布の状態と、無作為に選んだ標本の分布はある程度同じと仮定されます。
しかし、全く同じではありません。
図示するとこんな感じですかね。
例えば、母集団の平均値が100だったとします。
標本1つ目では99.7、標本2つ目では100.2 だったりと差が出ることがあります。
実際に正常者のデータの詳細は明かされていないので、データの分布などを確かめることはできません。
殆ど似たような値を示すと思われますが、全く同じではないのです。
これが機種間で単純に比較できない理由の1つ目です。
最大視標輝度の違い
基準となる明るさから徐々に暗くしていった時に「あっ、少し暗くなった」と感じる明るさをプロットしていくとこのようなカーブになります。
視野検査で使用されているdBと言う値はこれらのプロットを相対的な値で示したものです。
0dB を最大視標輝度とし、そこから表されているので、最大視標輝度が異なれば dB の値も異なってきます。
最大視標輝度は、ハンフリー視野計では 10,000asb、OCTOPUS視野計では4,8000asbに設定されています。
最大視標輝度が ①10,000 asb、②4,800 asb、③1,000 asb の場合を例にとって図で示すとこんな感じです。
カーブの形は変わらないのですが、最大視標輝度が 0dB になりますので、②と③の図では左側の方にずれます。
3機種間で10dBに相当する視標の明るさを見ると、①は1,000asb、②は480asb、③は100asb になります。
10dB という同じ数値でも 0dB に設定されている最大視標輝度が異なると視標の明るさが違うのが分かると思います。
これが機種間で単純に比較できない理由の2つ目です。
OCTOPUS900視野計では最大視標輝度をHumphrey視野計と合わせるために10,000asbに変えることもできます。
もし設定を変えた場合、従来の最大視標輝度 4,800asb と新しく 10,000asb で計測した結果は単純に比較できなくなります。
計測アルゴリズムの違い
昔は全点閾値法といって、4dB間隔で視標輝度を変化させて反応が無くなったら2dB 戻るといった単純な方法で計測されていました。
この方法は理論的には正確に測れるのですが、計測に時間がかかり、疲労の影響などで逆に結果がばらつくといった欠点があります。
そこで、この計測アルゴリズムにベイズ推定という統計学的手法を組み込みました。
事前に正常人と緑内障眼のデータを搭載し、これらのデータと照らし合わせながら閾値を予測して計測する方法です。
ハンフリー視野計と言ったらSITAで計測するのが当たり前となっていると思います。
正式名称は Swedish Interactive Threshold Algorithm。
僕が一番最初に機械学習に触れたのはこのSITAの論文だっ[…]
予測に使用されているデータベースも異なることに加え、SITA、ZEST、Dynamicなど使用されている統計学的手法も異なります。
同じ視野計で計測しても、計測アルゴリズムが違うと結果にも差が出てきます。
多くの研究で証明されていますが、ハンフリー視野計の全点閾値で計測された結果とSITAで計測された結果も異なります。
SITAの方が1~2dB 良く計測されます。
Humphrey視野計とOCTOPUS視野計では測定アルゴリズムが全く異なります。
例え同じ最大視標輝度の条件で計測しても値が少し異なります。
これが機種間で単純に比較できない理由の3つ目です。
さいごに
もう一度復習をすると、機種間で単純比較できない理由は、
① 正常眼のデータベースが異なる
② 最大視標輝度 (0dB) が異なる
③ 計測アルゴリズムが異なる
からです。
最後まで読んで頂き有難うございました。
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