量販店で簡単に購入できるカラコンって安全なのかな?と疑問に思う方が多いと思います。
今回はこの件について自分の体を張った解説ができればと思います。
まずは処方箋なく気軽に買えるカラーコンタクトレンズがどういったものなのか素材から検証します。
その後、実際に正しい用法で使った場合の安全性はどうなのか検証してみました。
今回の人体実験は1カ月の大がかりなプロジェクトです。
量販店のカラコンって安全なの?
以下で説明しますが、高度管理医療機器に分類されているものを正しく使えば安全です。
量販店で売っているコンタクトレンズはほぼ高度管理医療機器に分類されています。
そのためこのコンタクトを正しく使えば眼科で処方される近視矯正用のコンタクトと同じくらい安全です。
要は正しいものを正しく使うのが大事です。
高度管理医療機器
皆さんこの言葉を聞いたことがありますか?
コンタクトレンズはこの高度管理医療機器に含まれます。
そもそもこの高度医療管理機器とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年8月10日法律第145号)の第2条5の記載では、以下のように定義されています。
高度管理医療機器
医療機器であって、副作用又は機能の障害が生じた場合(適正な使用目的に従い適正に使用された場合に限る。次項及び第7項において同じ。)において人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。
コンタクトは医療器具の1つなんです。
医療器具はクラスⅠからクラスⅣまで分類されています。
数値が大きい程、万が一何かが起きた時に人体への影響が大きいものとなっています。
クラスⅢとⅣが高度管理医療機器に該当し、コンタクトレンズはクラスⅢです。
詳細は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)のページに分かりやすい説明が載っています。
先程は正しく使えば安全と言いましたが、100%で安全と言うわけではありません。
たとえコンタクトレンズを正しく使用していたとしても、万が一有害事象が生じた場合に眼に重大な被害を及ぼす可能性はあります。
正しく使用していれば万が一起こるかもしれない有害事象をゼロに近づけることは可能です。
高度管理医療機器に分類されているかいないかはパッケージの裏に書いてあるので確認できます。
正しい使用法
今は使い捨てのコンタクトレンズが主流となっています。
使い捨てレンズの場合は必ず使用期間を必ず守りましょう。
1DAYなら1日、2WEEKなら2週間のように。
なぜかというと、製造メーカーは販売前の実験段階でその使用期間以内の安全性しか証明していないからです。
正しい方法で使用していても、使用期間を守らずに長期間使用した場合、重篤な有害事象が起きてもおかしくないのです。
また2週間や1カ月の使い捨てのレンズの場合は、例え使用する日がなくてもレンズの洗浄およびレンズケースの洗浄を毎日必ず行いましょう。
レンズのグループと原料についての詳細
以下はごたごたいっぱい書いていますが詳細を知りたい方向けの情報です。
用がない方はすっ飛ばして次に進んで大丈夫です。
使い捨てのカラコンに大事なことをまとめると
コストを抑えるために少し乾きやすい素材で酸素透過性も良くないので長時間および長期間の使用はあまりよくないよ。
という事が書いてあります。
コンタクトレンズは、イオン性か非イオン性か、低含水か高含水かの組み合わせによって以下の4グループに分けられます。
コンタクトレンズのグループ
グループⅠ:非イオン性低含水
グループⅡ:非イオン性高含水
グループⅢ:イオン性低含水
グループⅣ:イオン性高含水
イオン性の説明をざっくり言うと以下のようになります。
イオン性か非イオン性による特徴
イオン性・・レンズがマイナスに帯電、プラスに帯電した涙液のタンパク質の汚れが付きやすい。乾きにくい。
非イオン性・・・レンズに電気的な帯電がなく、汚れが付きにくい。乾きやすい。
低含水か高含水かの説明は以下のようになります。
含水量の違いによる特徴
低含水レンズ・・・素材が少し硬く、乾きにくい
高含水レンズ・・・素材が柔らかく、乾きやすい
今の使い捨てレンズは、グループⅠが多めです。
また原料は、従来から使用されているハイドロゲル原料(ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、メチルメタクリル酸(MA)、およびジメチルアクリルアミド(DMA))と、アクリレートまたはメタクリレート官能基化シリコーン原料等に上記のハイドロゲル原料を重合したシリコーンハイドロゲル原料の2つが今の主流でです。
素材の違いによる特徴
シリコーンハイドロゲル・・・酸素透過性が高い
ハイドロゲル・・・水分を多く含み柔らかい。
現在はシリコーンハイドロゲルが主流となりつつあります。
しかし、製作コストが高くなるので、カラコンではハイドロゲル原料が主流です。
実際にカラコンを購入して正しく使ってみた
さて、コンタクトレンズの基礎はここまでとし、今回の本題にうつります。
理論上は安全と分かっていても実際に使ってみないと証明できないので実物を買って正しく使いました。
カラコンは皆さんが入手しやすいペンギンのロゴで有名大手雑貨量販店で2種類購入しました。
使用したレンズ
それにしても、綺麗なモデルさんを採用して沢山販売していますね。
この中から1つは1日使い捨てタイプ、もう1つは1カ月使い捨てタイプを購入しました。
購入にあたっては検者の選択バイアスが入らないように、信頼のおいているDちゃんにお願いしました。
以下レンズ詳細です。
Flower Eyes アイラックスイノバ・デイビュー 1DAY(税込¥1,026)
レンズスペック
Power 0D、BC 8.7mm、Dia 14.2mm
色: Quince Brown
グループⅠ: 非イオン性低含水
レンズ原料: 2-HEMA, EGDMA (Ethylene Glycol Dimethacrylate)
着色原料: フタロシアニン系着色剤、カルバゾール系着色剤、金属酸化物系着色剤
着色方法: 添付文書の記載だとサンドウィッチ方式と思われる。
含水率: 38.5%
酸素透過係数: 8.0 x 10-11(cm2/sec)・mLO2/(mL・mmHg)
酸素透過率: レンズの厚みの記載がなかったので計算できず
高度管理医療機器承認番号: 22300BZI00029000
使用期限: 2024年2月
LOT番号: 1145180404
1日当たりのコスト: ¥1,026 / 4日 = ¥256.5 / 日
Color List ジュピターマンスリー(税込¥1,080
レンズスペック
Power 0D、BC 8.7mm、Dia 14.5mm
色: #BR20
グループⅠ: 非イオン性低含水
レンズ原料: 2-HEMA, EGDMA (Ethylene Glycol Dimethacrylate)
着色原料: アゾ系着色剤、金属酸化物系着色剤、アントラキノン系着色素材
着色方法: 添付文書の記載だとサンドウィッチ方式と思われる。
含水率: 記載なし
酸素透過係数: 記載なし
酸素透過率: 酸素透過係数の記載がないため計算できず
高度管理医療機器承認番号: 22500BZX00517A02
使用期限: 2023年3月
LOT番号: PJB1103033
1日当たりのコスト: ¥1,080 / 30日 = ¥36/日
実際の装用方法
添付文書に従い左眼のみ装用しました。
使用後の自覚症状および細隙灯顕微鏡による角膜表面への影響を主に観察しました。
1カ月使い捨てタイプのレンズは、添付文書によると過酸化水素およびポビドンヨードによるレンズ洗浄は避けるように書かれています。
実際に1カ月間過酸化水素水で洗浄を繰り返すとどうなるかも試してみました。
何かあったら嫌なのでこのレンズは装着ぜずに、日中は生理食塩水に浸し、夜間は過酸化水素水で洗浄するサイクルを1カ月繰り返しました。
装着したレンズに関してはメーカーが推奨する、1本で洗浄・すすぎ・浸け置きができるマルチパーパスソリューション(MPS)で管理しました。
他にも角膜側に触れるレンズ後面を綿棒で20回擦り色素の沈着がないか検討しました。
今回の実験は完全に自己責任のもと行っています。
実際に装用した結果
結論を先に言いますと特に何も起こりませんでした。
すなわち安全でした。
ただシリコーンハイドロゲル素材に慣れているせいかハイドロゲル素材のカラコンはやっぱり乾くといった印象でした。
以下それぞれのレンズの装用結果をお話しします。
1日使い捨てレンズ(Flower Eyes アイラックスイノバ・デイビュー 1DAY)
添付文書では1回目の装用は2~4時間と書いてあったので4時間でレンズを外しました。
はじめに左眼に装着したときの写真を示します。
装着直後(上)と取り外し直前(下)の写真です。
自覚症状
色なしの通常のコンタクトレンズをスポーツする時と外出する時に使っています。
付けた最初はそれと同等の装用感で違和感は感じませんでした。
しかし装着して2~3時間ほど経ったあたりから乾燥を感じました。
感想感はいつも診られる所見なので、今回のカラーコンタクトが原因だとは思えません。
細隙灯顕微鏡所見
画像の記録ができる細隙灯顕微鏡がなかったので画像がないのはご容赦下さい。
フルオレセインで染色しても眼表面に傷などはありませんでした。
綿棒で擦った所見
綿棒への色素の付着等はありませんでした。
1カ月使い捨て(Color List ジュピターマンスリー)
添付文書では、1回目6時間、2回目8時間、3回目終日(12時間以内)と書いてあります。
最初の2日間は添付文書通りの時間とし、3日目以降は仕事がだいたい7時から16時なので9時間装用でした。
はじめに左眼に装着したときの写真を示します。
装着直後(上)と最終日の取り外し直前(下)の写真です。
1カ月後は日焼けしているだけでコンタクトレンズとは関係ありません。
1カ月経っても特に大きな変化はありませんでした。
自覚症状
このレンズも同様に装着して3時間ほど経ったあたりから乾燥を感じました。
感想感はいつも診られるので今回のカラーコンタクトが原因だったとは思えません。
細隙灯顕微鏡所見
1カ月タイプも同様に細隙灯顕微鏡所見の写真はありません。
フルオレセインで染色しても眼表面に傷などは認めませんでした。
綿棒で擦った所見
綿棒への色素の付着等は認めませんでした。
過酸化水素で保存したレンズ
保存前(左)と1カ月後(右)の写真
特にレンズから色素が染み出ているという所見もありませんでした。
1カ月後のレンズを綿棒で擦った時の写真です。
擦っても色素が綿棒に付着するといった所見はありませんでした。
装用結果に対する自分なりの考察
今回はペンギンのロゴでお馴染みの量販店のカラコンの安全性を調べるために自らの眼を使って実験してみました。
過去に大手雑貨量販店で購入したレンズを綿棒で擦ったら色素が付着したとか眼が充血し痛くなった等の報告が散見されました。
おそらく昔のレンズはプリント式の製法で作られておりレンズの裏面に塗装されていたからだと思います。
長時間または長期間の装用等で塗装がはがれやすかったんでしょう。
購入者が眼科でコンタクトレンズの着脱指導や洗浄指導を受けない状態で、間違った使い方をしていたのも眼障害の原因だったとかもしれません。
その一方で近年は殆どがサンドウィッチ式で作られているためその危険性がだいぶ減ったと考えられます。
レンズの素材も添付文書上では従来の色なしレンズの素材と殆ど同じな」ので危険性が減ったと思われます。
しかしweb上や店頭では美容を宣伝することが先行している感じがします。
眼に装着する医療機器にも拘わらずレンズの設計データなど重要な部分が報告されていないのが気になります。
実際に高度管理医療機器の承認を得ていてもこの情報開示は必須だと思います。
今回1カ月タイプのレンズの過酸化水素を使用した保存方法についても検証しました。
このレンズは安全性が保障されていないので実際には装用していない結果であることに注意してください。
今回何もなかったのは男性と女性では目元のメイクなどの有無といった違いもあると思います。
実際にアイラインなどを引いている女性ではその成分がレンズへ及ぼす影響が考えられます。
さいごに
今回の量販店のカラコンの安全性を検証した実験は如何でしたか?
大手雑貨量販店で売られているカラコン=危険という概念は必ずしも正しいとは言えないと思います。
しかしレンズのスペックに関する詳細な情報が不足しているので100%安全とも言い切れません。
またコンタクトレンズの大手メーカーが出しているカラーコンタクトレンズ(または色付きレンズ)が絶対に安全とも限りません。
通常の色なしコンタクトレンズもカラーコンタクトレンズも眼の管理は自己責任です。
自分で納得したうえで使いましょう。
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