視能訓練士だって研究者になれる!日本を代表する視能訓練士の研究者がその方法をお伝えします

  • 2019年6月1日
  • 2023年12月15日
  • 研究
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視能訓練士と言ったら斜視弱視でしょ?と思っている方は少し考えが古いかもしれません。

確かに海外では視能訓練士は斜視弱視・ロービジョンしかやりません。

過去の記事でも書きましたが、日本の視能訓練士は世界でもトップクラスです。

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僕の主な仕事は研究ですが一応視能訓練士という国家資格を持っています。臨床、博士号取得、大学教員、国内外でのポスドクと色々な経験をしてきました。自分でいうのもアレですが日本では異色の視能訓練士です。自分以上の経験と業績を持った[…]

なぜなら海外で分業している内容を一人で全部できてしまうからです。

日本の視能訓練士は眼科に関する知識が幅広いので外来で検査だけをやっていては勿体ないのです。

海外では眼科医と視能訓練士の間くらいの職種の Optometrist がどんどん研究分野に参入しています。

我々視能訓練士も Optometrist と同様の知識と手技があるので研究分野で十分やっていけます

今回の記事では、視能訓練士が研究者の仲間入りする方法を提案します。

それでは少し深堀していきましょう。

視能訓練士だって研究者になれる!

研究者と聞くと学者のような人を思い浮かべる方もいるかもしれません。

研究者と言っても、責任者としてバリバリやる人やその人を支える人など様々あります。

人前で発表したりするのが苦手な方はデータを計測して支える立場になるのも良いです。

どういった形でも研究に携われば立派な研究者です。

実際にどうやって視能訓練士が研究へ参入するの?

いきなり一人でやるのは難しいので研究をしている先生や先輩と一緒にやることがよいです。

実際に研究ってデータ計測・入力、統計解析、学会・論文発表という流れになっています。

これらの工程で難易度が低い順に言うとこうなります。

① データ計測・入力

僕も最初は研究している先生にお願いされてデータ計測からスタートしました。

正確なデータ計測ができないと研究は成り立たないので、実はデータ計測が一番大事です。

このデータ計測は視能訓練士の一番得意分野ですよね?

実は日々の臨床業務で何気なく行っている検査は物凄い武器になります。

② 統計解析

皆さん統計解析とか嫌いだと思うのですが、眼科で使う統計解析は限られているのでそんなに心配することはありません。

国家試験より簡単ですので勉強すればすぐにできます。

今はweb上に有力な情報がバンバン載ってますのでwebで勉強するのもありです。

③ 学会・論文発表

人前で話すことが苦手であれば発表する必要はありません。

学会発表よりも論文発表の方が大事なので気にすることはありません。

形に残るのは論文発表なので論文として形に残しましょう。

 

最初は研究している先生や先輩のお手伝いをするのが一番良いと思います

先生も視能訓練士から声をかけてもらったら物凄く助かると思います。

何故なら冒頭でもお話ししましたが正確なデータ計測が研究には必要だからです。

積極的に話しかけてみて下さい。

どれくらい研究に貢献したら研究者なのか?

研究というものは一人でやると物凄く時間がかかり内容も薄くなります。

一番理想的なのは、先程述べた3つの工程でそれぞれスペシャリストで分業することです。

海外ではこの辺は徹底されているのでスピードも内容の濃さも桁違いです。

そのため環境が整った施設の論文は共同研究者の名前が沢山載っています。

実際にどれくらい研究に貢献すると共同研究者として資格が与えられるのか一応決まりがあります。

共同研究者の資格

いきなり学会発表とか論文書くの無理だよ。と思っていますよね。

でもそれだけが研究ではありません。

研究はチームプレイなので先陣を切っている上司の補助だって立派な研究者なのです

英文雑誌の Ophthalmology には共同研究者としての基準が書かれています。

以下抜粋です。

共同研究者の基準

  1. Substantial contributions to conception and design of the work; or the acquisition, analysis, or interpretation of data for the work; AND
  2. Drafting the work or revising it critically for important intellectual content; AND
  3. Final approval of the version to be published; AND
  4. Agreement to be accountable for all aspects of the work in ensuring that questions related to the accuracy or integrity of any part of the work are appropriately investigated and resolved.

この基準は International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) という組織が定めた共同研究者の基準です。

1から4の基準をすべて該当しないといけないのはさすがに…と思っていませんか?

意外に視能訓練士は全部該当しちゃいます(しちゃってます)

順に説明します

① 研究デザインの考案、データ計測・解析・データの解釈

ここは視能訓練士の得意分野ですね。

検査が仕事ですからばっちり該当しますね

② 論文などを書いたり修正したりする

一緒にやっている先生や視能訓練士が論文などを書いているときに知識の提供をすれば該当します。

データを計測しているときの肌間隔は検査した視能訓練士にしかわかりません。

日本の視能訓練士の知識と技術は世界的にも凄いのでバンバン知識の提供をしましょう。

③ 論文投稿への同意

主任研究者の方が出来上がった論文を投稿するから念のためチェックしてください。

という問いかけに対し論文をチェックして宜しくお願いしますと同意することです。

④ 研究内容に責任持つことの同意

研究がちゃんと行われて目的が解明できたという事に責任を持つことに同意することです。

ちゃんと目的持ってやっている研究で視能訓練士がデータ計測していれば信頼性も高いですし該当しますね

 

どうでしょうか?

データを計測して一緒に考察を考えていればあなたも立派な共同研究者ですね。

研究をしている先生や先輩視能訓練士と一緒に日々の仕事をするだけで立派な研究者にもなっているのです。

日々の臨床業務で心掛けること

日々何気なく行っている検査業務ですがこれも将来研究データになることがあります。

研究に関係するからちゃんとやるというのはおかしなことですが、そういったことも心がけて仕事に取り組むと良いです。

検査はどんな時も全力で

研究って大きく分けると前向き研究と後ろ向き研究の2種類あります。

前向き研究とは未来に向けてデータを計測していく研究で、後ろ向き研究とは過去のある期間に該当するデータを解析する研究です。

エビデンス(根拠)レベルは前向き研究の方が高いのです。

しかし後ろ向き研究の方が人件費や経費が抑えられることに加え、比較的簡単に取り組めるのでよく行われています。

この後ろ向きに研究に大事なのが、視能訓練士の皆さんが計測した神がかったデータです

えっ何で!?と思うかもしれませんが、本当に大事なんです。

何故かというと、前向き研究の場合は該当することが分かっているのでより正確に計測します。

しかし後ろ向き研究の場合は過去のデータを使うので、あまり上手に撮れていないデータは除外されてしまいます。

すなわち正しく測れたデータが少なければデータ数も減ってしまうのです。

日々の臨床では常に全力で取り組んでください。

視力は最高視力まで

昔の方の考えでは1.2以上は過矯正だとか、1.2以上は必要ないとか良く分からない事を言われました。

視力検査を1.2で終了している方は今すぐ最高視力まで計測しましょう

何故かというと眼科研究において視力は解析データとしてすごく使われるからです。

たとえば、矯正視力が1.0という患者さんに対しある薬を注射する前と後の視力を比較するとします。

視能訓練士Aさんはいつも視力を1.2までしか測らない方で、注射後の視力は1.2でした。

視能訓練士Bさんは常に最高視力を測る方で注射後の視力は2.0だったとします。

Aさんの場合はもちろん改善しているのですがLogMARに換算すると1段階だけしか改善していません

Bさんの場合はLogMARにすると3段階も改善しています

こういった症例が増えれば増えるほど統計解析が曖昧なものになってしまうのです。

いつ後ろ向き研究でデータを使うか分からないので、日々の視力検査では最高視力を出すことを心がけて下さい。

常に疑問を持ちながら仕事する

働き始めたころは色んな事に疑問を持っていたと思います。

経験と知識がつくにつれて日々の作業が流れ作業になっていませんか?

常に何かに疑問を持っている事って大事なんです

研究のテーマって日々の疑問から思い浮かびます

例えばなんで子供の近視ってこんなに早く進むのかな?って思いませんか?

その疑問がもうすでに研究の始まりなんです。

学会に参加したらその分野を研究している方々が近視の進行について発表しています。

それを聞けばまた次のアイデアにつながります。

何でオルソケラトロジーやコンタクトで矯正している子供って近視の進行速度が遅いのかな?

みたいにどんどん次に繋がっていきます。

疑問を持たずに日々の仕事を流れ作業のようにしている方はこういった発想があまり出てきません。

さいごに

僕は緑内障でも特に視野とOCTを研究しています。

働き始めた当初は視野検査が一番嫌いでした。

なぜなら暗闇で検査するので眠くなるからです。

ほやほやの1年目の頃は視力と視野しかやらせてもらえずうんざりしていたくらいです。

しかし、この視野検査結果の指標って何を意味するのかな?何で固視が良いのに盲点に反応があるのかな?

みたいな疑問を誰も教えくれる人がいなかったので、自分で調べていくうちに大学院に行き、研究者になって、ロンドンに行き、カナダに行っていました。

人生なんてそんなもんなんです!

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