僕の主な仕事は研究ですが一応視能訓練士という国家資格を持っています。
臨床、博士号取得、大学教員、国内外でのポスドクと色々な経験をしてきました。
自分でいうのもアレですが日本では異色の視能訓練士です。
自分以上の経験と業績を持った視能訓練士を見た事ががありません。
おそらく視能訓練士業界では日本でたった一人という存在だと思います。
そこでこれまでの色々な経験から今後視能訓練士が進むべき方向性を真剣に考えてみました。
なぜこんな記事を書いたかと言いますと以前の記事でAIの普及と人口減少で視能訓練士の需要は減るだろうとお話ししました。
人工知能という言葉を当たり前のように耳にするようになりましたね。
今回は人工知能によって我々視能訓練士の仕事が今後どう変わっていくかについて考えたいと思います。
僕は人工知能の一つである機械学習をよく使って解析するのでなんとなく想像[…]
つまり普通の視能訓練士では今後詰む時代が近い将来やってくるわけです。
今回は生き残っていくために視能訓練士の方はどうしていくべきか個人的な意見を述べたいと思います。
結論を先に言いますと従来の視能訓練士では生き残れないので付加価値として情報発信できる貴重な存在になれということです。
この記事を読んで新しく何かやろうと思って頂けたら嬉しいです。
視能訓練士のタイプ
日本で働いている視能訓練士はざっくり3つのタイプに分かれると思います。
視能訓練士の3タイプ
1.臨床現場で医療を支える(96%)
2.臨床と研究の両立(1%)
3.視能訓練士を育てる教員(3%)
3の教員に関しては養成校の数に限りがあるのでこの数は今後も変わらないか減る一方だと思います。
今現在の視能訓練士は臨床で医療を支えている人が殆どだと思います。
2014年の厚生労働省のデータによると7,732人の視能訓練士ORTが病院で働いているとのこと。
資格所有者だけを計算すれば10,000人を超えていると推定されます。
ここまで沢山いれば世界にも通用しますね。
ただ世界で戦っている視能訓練士何人くらいいると思いますか?
数えきれるくらいしかいないんですよね。
僕はここに細く長く生き延びる道があると思っています。
視能訓練士の働き方えを変えるべき所
そろそろメスを入れた方がいいと思うのは、1の臨床現場で医療を支えるORTと2の臨床と研究の両立ORTの比率です。
臨床と研究の両立ORTは肉体的な限界があるのと研究の生産性が伸びないのでそろそろ海外のやり方を導入すべきです。
僕のポジションのように「研究者」という枠をたくさん作るべきだと思います。
何故かというと日本の視能訓練士って海外の視能訓練士に比べると圧倒的に技術と知識があるんですよね。
海外の視能訓練士は斜視弱視・ロービジョンケアしかできない人が殆どなのでこれを最大限に活かさないのは勿体ないです。
すなわち研究の術さえ身に付ければ海外でも十分通用する視能訓練士になれます。
海外に留学して分かりましたが今の日本の医療(少なくとも眼科)に関しては海外の先進国と同じレベルです。
しかし今の日本が他の国から遅れを取り始めているのが研究の分野です。
我々視能訓練士が力を注ぐべきところは研究の分野です。
なぜ視能訓練士が研究か?
海外ではOptometristという眼科医と視能訓練士の間ぐらいのポジションの人達と眼科医が主に臨床を支えています。
詳しくは以前の記事に書いてあります。
Optometristといっても手術やレーザー治療の侵襲性のある行為はできずそれらは眼科医でないと行えません。
しかし検査から診療行為薬の処方までOptometristができます。
普段我々視能訓練士がやる検査業務は主にTechnicianと呼ばれる国家資格はないけど講習を受けた方たちが行います。
海外の視能訓練士は主に斜視弱視・ロービジョンケアだけです。
眼鏡やコンタクト処方はOpticianと言われる方達がお店でやります。
日本の視能訓練士の凄さに気づきました?
海外ではOptometrist、Technician、Opticianがそれぞれ分業してやっていることを1人で全部やっているのです。
日本の視能訓練士の日々の業務はとてつもなく忙しくあっという間に一日が終わると思います。
そのため殆どの人が身に付けたものが物凄い物であることに気付いていません。
これだけ幅広い知識と技術のある視能訓練士が臨床だけやっているのは勿体ない極みです。
この先臨床での視能訓練士の業務が減り需要も減ってきた時に価値ある視能訓練士が勝ち残る世界が来ると思います。
そうなった時に動き出しても遅いので今から沢山情報発信できる視能訓練士になり付加価値を付けることがとても大事だと思います。
情報発信には、論文や学会発表の他に市民講座や地域の勉強会でお話しするなど何でもあります。
自分の知識と経験を内に秘めているだけでは勿体ないです。
もっと積極的に研究の分野に足を踏み入れる人が増えれば一般的な知名度も直ぐに上がると思います。
どうすれば研究者になれるの?
方法は簡単で自分の意志さえあればなれます。
この記事でも少し触れています。
僕のように海外留学したりガチな研究者になるには博士号(PhD)の学位が必須となります。
しかし研究者として情報発信するには学位なんて必要ありません。
あなたのやる気次第でなんとでもなります。
ただ何も分からない状態で情報発信しろと言われても無理ですよね?
以下僕が普段から心がけて欲しいことをご紹介します。
① 最初の就職先は大学病院
一番ベストな就職先は大学病院です。
大学病院では幅広い臨床が学べますし、同時に多くの研究が行われています。
スタートの時点で両方を学ぶことができます。
僕は最初は我武者羅に臨床をやることをおススメします。
何故かというと研究をするにあたってもデータを正確に取得する術や知識が必須だからです。
この基本がないとこの先の人生の幅がだいぶ狭まることにもなります。
臨床出来ないと他で働くことができませんからね。
② 自分が何の分野に興味があるかじっくり考える
興味のない事は続きませんし満足感がえられません。
これは出来る出来ないを言っているのではなく、興味があるか無いかの話しです。
興味があるものが分からなかったら、嫌いな分野を明確にしておきましょう。
その嫌いな分野以外なら事は進むと思います。
僕は視能訓練士ですが斜視弱視の分野が一番苦手で嫌いです。
その一方で昔から数学が好きだったので今は数値を沢山扱う緑内障の視野とOCTの研究をしています。
好きな分野があると没頭できますし、長時間没頭していてもストレスになりません。
③ 今自分がいる所が適切か考える
もし今所属しているところが自分の興味のある事をメインにやっていたらそこは貴重なところです。
自分にとって適切であると自覚できればそののまま突き進んで下さい。
自分が所属しているところが自分の興味のある分野に精通していなかったら早めに転職しましょう。
ストレスになりますし得る物がありませんからね。
上司はとても大事です。
僕は幸いにも素敵な上司に沢山であってきたので物凄く貴重な経験をたくさんしました。
留学もそうですし多くの研究をさせて頂き英語論文も20編以上書きました。
それによって視能訓練士である自分に研究者という大きな付加価値が付きました。
今研究者として生きていけるのは適切な場所で突き進むことができたからです。
④ 居場所を見つけたらとりあえず情報発信
最初から英語でやってもいいと思いますがまずは母国語でやった方が呑み込みが早いと思います。
僕は人生初の学会発表は英語でした。
今思うと全然臨床的な還元要素のない研究内容で良く発表したなと思います。
当時の上司もそう思っていたと思いますがやはり経験を積むことが何よりも大事です。
最初からできる人はまずいません。
周りからの刺激や失敗を繰り返して成長していきます。
少しずつステップアップしていくと毎回満足感を得られます。
この満足感が積み重なって少しづつ名の知れた人になっていくんだなと思います。
情報発信に慣れたら英語での成果発表にチャレンジしてください。
そうすると日本という狭い範囲から一気に世界へと広がります。
日本語で論文とか書けるようになったらそれを英語にするだけで国際デビューです。
僕もそうですが英語なんてできません。
だから英軍校正業者に自分の英語を直してもらいながら論文を書いています。
何とか論文を英語にしたけどこれをネイティブに直してもらいたいと思ったことはありませんか?
僕はあります。研究歴20年近いですけど毎回この気持ちです。
今回はそういった方の気持ちに応えるために僕のおススメ英文校正業者をご紹介したいと思[…]
1編英語論文が掲載されるとPubMedというデータベースに残ります。
ここに名前が載ったときの感動は凄まじいものです。
だって自分が死んでも後世に研究内容が引き継がれるわけですからね。
ご自身のお子さんやお孫さんに自分が生きていた証を残すことができます。
今視能訓練士ORTの研究の現状
視能訓練士学会とかの演題を見ても斜視弱視分野の演題が多い印象にあります。
ただ上記でも述べましたが何度も言います。
我々視能訓練士は想像以上に知識と経験があるのです。
緑内障、網膜・硝子体、角膜、白内障、屈折矯正手術など色んな分野にもっと進出しましょう。
国内で情報発信の経験を積んだら国外でもどんどんチャレンジしてください。
言葉が変わってもやり方は同じです。
こんなに知識と経験のある視能訓練士が日本に沢山いるのに世界に情報発信している人が少ないのは勿体ない。
英語を話すのが苦手ならポスターで発表すれば良いのです。
とにかく日本は眼科の研究分野では間違いなく遅れています。
皆さんのその豊富な経験と知識を活かしましょう。
因みに僕はこうやって英語のスキルを身に付けました。
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日本人の英語ができない理由分かりますか?
今海外で生活していて感じた理由は以下の3つです。
[…]
まずは日本の学会に参加してみましょう。
色々な人がいるんだなと思うと同時に同じことに興味を持った仲間に沢山出会えます。
特に幅広い分野の学会である、臨床眼科学会と日本眼科学会はおススメです。
インストラクションコースといって機械の使い方や知識など大学の講義に近い教育セミナーもあるので参加してみてください。
少し度胸がついたら質問してみてください。
その時に忘れてはいけないのは、〇〇眼科・大学の視能訓練士の〇〇です。
と言って視能訓練士であることをアピールするのが大事です。
僕も大学院生の時は学会中に1日1質問を目標としていました。
学会発表しなくてもそれだけで自分の宣伝もできますし、視能訓練士の宣伝もできます。
こうやって少しずつ研究の分野にも足を踏み入れれば自分に大きな付加価値が付きます。
さいごに
今後の視能訓練士ORTの未来のために、それぞれの立場の視能訓練士ORTの方にメッセージを伝えたいと思います
これからORTになる方
時代はどんどん動いています。
新しい情報は色々なところから得られますので常にアンテナをはって頑張って下さい。
ほやほやORTの方
今は分からないことが多いと思いますが、我武者羅に臨床に取り組んで下さい。
知らないうちに物凄い経験と知識が身についてきます。
自分の思っている所じゃなかったなと思ったら早めに転職してください。
ベテランORTの方
部下を支配下に置くのが上司の仕事ではありません。
部下の成長や出世こそが上司の業績です。
若手が自由な発想を発言できる環境こそが理想の環境です。
お休み中のORTの方
パートタイムでもいいので是非現場に復帰してください。
今まで身に付けた知識と経験は思った以上に衰えていません。大丈夫です。
一人でも多くの戦力が必要なんです!
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