留学が終わり日本に帰ると視能訓練士や眼科の先生と飲みながら留学話をする機会が増えます。
視能訓練士や眼科の先生から聞かれる内容の中で一番多かったものはイギリスと日本での仕事の違いです。
自分なりに感じたことが多く病院全体編と視能訓練士編に分けてお話ししたいと思います。
今回は視能訓練士の仕事の違い編です。
因みに、病院の仕組みや仕事の違い編はこちらになります。
留学が終わり日本に帰ると視能訓練士や眼科の先生と飲みながら留学話をする機会が増えます。視能訓練士や眼科の先生から聞かれる内容の中で一番多かったものはイギリスと日本での仕事の違いです。自分なりに感じたことが多く病院全体編と視能訓練[…]
個人的な感想ですが実は日本の視能訓練士は世界トップクラス級に優秀だなと感じます。
なぜなら眼科的な知識、眼科全般の検査、斜視弱視・ロービジョンケアまで全部できますからね。
イギリスと日本の病院の視能訓練士の仕事の違い
皆さん当たり前のように眼科全般の検査、斜視弱視・ロービジョンケアまで全部やってますよね?
これ視能訓練士というくくりで世界的にみると実は世界トップクラスなんですよ。
以前の記事でもこの件に触れましたが、これを臨床だけではなく研究の分野に活かさないのはもったいないのです。
人工知能という言葉を当たり前のように耳にするようになりましたね。今回は人工知能によって我々視能訓練士の仕事が今後どう変わっていくかについて考えたいと思います。僕は人工知能の一つである機械学習をよく使って解析するのでなんとなく想像[…]
僕の主な仕事は研究ですが一応視能訓練士という国家資格を持っています。臨床、博士号取得、大学教員、国内外でのポスドクと色々な経験をしてきました。自分でいうのもアレですが日本では異色の視能訓練士です。自分以上の経験と業績を持った[…]
またまた言いすぎだよ!と思うかもしれませんが以下の仕事の違いを読んで頂ければ分かると思います。
視能訓練士免許に違いはあるの?
これはどの国も共通で視能訓練士はちゃんとした国家資格になります。
講習を受けた程度で誰でも希望してなれるわけではありません。
しかし残念ながら日本で取得した資格は日本でしか使えません。
そのため僕を含め皆さんの視能訓練士免許は海外では通用しないので医療行為は禁止です。
後ほど詳しくお話ししますが日本の視能訓練士でもイギリスでテクニシャンとして働く方法はあります。
ちょっと給料は下がりますが…。
イギリスの視能訓練士の仕事は何?
日本の視能訓練士の方は、眼科検査全般・斜視弱視・ロービジョンケア・眼鏡コンタクト検査などすべて行いますよね?
何ならこの他にも検査という名前が付くものは全部行いますよね?
しかしイギリスの視能訓練士は違います。
斜視弱視とロービジョンが圧倒的に多く、
仕事量が全然違いますね。
イギリスの視能訓練士は本来の視能訓練士業務に特化しています。
実際に小児病棟で働いている視能訓練士を軽く見学しましたが、めちゃくちゃのんびりしていて楽しそうでした。
子供の斜視弱視などを集中してやりたい方はイギリスに留学するといいかもしれません。
僕は斜視弱視の分野が全くでき何でイギリスでは全くやっていけません…。
眼科外来の一般検査は誰が行うのか?
一般眼科の検査をするのは、技術補佐員 Technicianと看護師 Nurseです。
技術補佐員 Technicianですが、 この方々は特に資格を持っていません。
講習を受けた人達です。
といいましても、よく考えてみてください。
外来で行う事前検査は、視力検査、視野検査、画像検査くらいだけです。
そこまで難しくないですよね?
何を言っているんだ!視力検査は奥が深くて講習受けた程度の人では無理だろ!と思う方がいると思います。
しかしイギリスの外来での視力検査は、
いつもの見え方が変わったか変わってないかしかみていません。
は?
イギリスでは裸眼で来た人は裸眼視力のみ、眼鏡で来た人は眼鏡の視力しかはかりません。
は?はい?
屈折変わったらどうするの?と思うかもしれませんが、イギリスではこのような遮蔽版を使用しています。
この遮蔽板にはピンホールがついていて、通常のオープンの状態で測って視力が落ちていたらピンホールを使って確認します。
ピンホールには大体±0.50Dくらいの矯正効果(焦点深度の拡大)があるので、多少の屈折変化はこれで対応します。
変化があった場合、眼鏡屋で眼鏡を作り変えるか、
外来には一応オートレフがあります。
しかし、白内障の手術を受けた患者や著しく視力が変わった人しか測りません。
こんな視力検査なら視能訓練士でなくても誰でもできますよね。
日本はどうでしょうか?
一番のレンズ、二番のレンズどちらが良いですか?また違うレンズです。一番と二番どちらが良いですか?
とやっている方が多いと思います(やらされている人が多いと思います)。
僕はレフ値ボーンはですけどね。
視野検査も同じですよね。
説明さえ完璧に行えばあとはスタートボタンを押すだけです。
そしてモニターを見ながらキョロキョロしていないかを監視するだけです。
時々偽陽性反応が多い患者がいますが、
OCTの画像検査も今はオートアライメントが効くのでそこまで特別な技量はいりませんよね?
上手に測れなかった患者はオーダーを出した眼科医や Optometrist が各自で再検査をしたりしていました。
これらのシステムでも上手く回るんですよね。
検査の質の違い
これはやはりダントツで日本の方が上です。神レベルです。
そりゃそうです。体が疲弊するほど残業したり大量の患者さんを検査していますからね。
また検査している種類も多いですからね。
僕は外来業務は許されていませんでしたが、自分の研究対象者のリクルートで週に1,2回外来に出向いていました。
たまに検査に苦慮している 技術補佐員 Technician や 看護師 Nurse に手を貸してあげると、お前凄いな!みたいなことを言われました。
ただレフケラトを普通に計測しただけなんですけどね。
日本では当たり前の技術が、海外に行くとかなり凄い武器になります。
もし、今仕事に価値ややり甲斐を失いかけている視能訓練士の方がいたらイギリスでチャレンジしてください。
人生観が変わると思います。
診察室でも視力が測れる
各外来に 技術補佐員 Technician が1,2人いて、ほぼ全員の視力を測ります。
しかし、前のセクションでお話ししました方法ですのでかなり楽です。
途中でお菓子をつまんだり飲み物飲みながらでもあまり待ち時間なくほぼ全員測りきれます。
眼科医や Optometrist も診察患者がいない時はカルテを検査室から持って行き、自身の診察ブースで視力を自分で測ります。
下の写真は診察ブースなのですが患者が座る黒い椅子の頭上に視力表があるの分かりますか?
どうやって測るかというと、鏡を前において鏡の中に写る視力表を読ませることで測ります。
省スペースで意外に便利です。
本物の視能訓練士はどこにいるの?
Moorfields は歴史的建造物の中にある一般病棟に加え超モダンな建物の中に小児病棟があります。
大半の視能訓練士はこの小児病棟にいます。
僕は緑内障部門のリサーチフェローだったので実際の視能訓練士業務は軽く覗き見程度でした。
建物には Richard Desmond Children’s Eye Centreと名前がついています。
各階に受付があり、担当の視能訓練士またはOptometrist がいるフロアに行きます。
各階の受け付けのところには子供達が楽しめるような大きなキッズスペースがあります。
むしろ、楽しみすぎて検査にならないんじゃないかというくらいのスペースです。
完全予約制で1人にたっぷり時間をとっているのでかなり手の込んだ検査や訓練ができると思います。
日本では色々な患者さんの検査の合間にやるのでそんなことできませんよね。
ここはかなりイギリスと日本で違いがあると思います。
視能訓練士の給料に違いはあるの?
結構気になりますよねお金の話し。
イギリスの視能訓練士の給料
£27,628 – £35,530
日本円で400万円 – 515万円
(£1=145円)
日本ってあんまりお金を公開しませんが海外では公開されています。
一般人に対しお金に見合った仕事をしなくてはならないという事も含まれています。
日本みたいに曖昧な口約束で後で全然給料違うじゃんとならないようにもなっています。
支払う税金は日本と同じがやや高めです。
イギリスの物価は日本の約1.5倍ですのでそれを考慮するとイギリスの視能訓練士の給料はやや安いかもしれません。
ただ必ず定時ですし臨床と研究を十分に行える環境っていうのを考慮するとQOLは高いと思います。
有給休暇とかはとりやすいの?
有給休暇はだいたい30日くらい以上は付与されます。
有休が取れない、先輩の有休が優先、っといった日本人特有の空気の読み合う冷戦はありません。
皆さん欠勤を使っているのかというくらい休んで海外旅行などに行っていました。
後は勤続年数が長いとサバティカル制度を使うことができます。
これは更に職場に貢献できるように、半年くらいの休暇を取り短期留学したり、研究に専念したりする長期有給休暇です。
僕の上司も途中でサバティカル制度を使って半年間外来業務を閉じ学術分野に専念しておりました。
こういった点ではダントツでイギリス良いですね。
日本の視能訓練士がイギリスで働くことは可能?
日本の視能訓練士がイギリスの視能訓練士として働くにはライセンスを取り直す必要があります。
しかし冒頭で説明した通り、日本の視能訓練士がやっているような仕事内容は、技術補佐員 Technician が行っています。
すなわち技術補佐員 Technician という職種で働く事はできます。
イギリスのテクニシャンの給料
年収£11,000 – £34,000
日本円で160万円 – 490万
(£1=145円)
かなり安いですね…。
おそらく日本人を含む殆どの移民は最低賃金からかと思います。
しかし英語がペラペラで日本での実務経験が豊富であればそれなりの額は貰えると思います。
働くにあたり就労ビザが必要でイギリスで就労ビザをとるにはそれなりの英語能力が問われます。
IELTS(アイエルツ)などの試験で高得点の結果が要求されます。
イギリス人と結婚してイギリスに住めば簡単にビザを獲得して働くことができます。
現在イギリスはEU離脱した関係でEU諸国のスタッフが皆母国に帰り働くにはチャンスかもしれません。
さいごに
日本の視能訓練士のライセンスでイギリスで視能訓練士はできません。
ただ、技術補佐員 Technician としてなら、日本でやっている仕事内容でイギリスで働けます。
将来もしイギリスで働いてみたいという方は検討してみてください。
または視能訓練士の本場イギリスでライセンス撮り直すのも良いかもしれませんね。
仕事はだいぶ楽ですし斜視弱視が得意な方は日本を離れてイギリスで働くとQOL上がるかもしれません。
この記事面白かった、役に立ったと感じた方は気軽にシェアしてください!
KazukunORTPhD、 hirachan_ort_phd、 留学先ハリファックスのブログ
ツイッターをフォローしてダイレクトメールをして頂ければ質問等にお答えします!