先日患者さんに「えんきん ってサプリご存知ですか?あれって老眼に効くのでしょうか?」と聞かれました。
「今の医学では、老眼は治すことができないんですよね。サプリメントには抗酸化物質が入っている物が多いので、体には良いと思います。」
と回りくどい回答をしました。
なぜなら、えんきん の原著論文を読んだ事がなかったので、
今回は、
結論からすると原著論文が少々お粗末なので効き目があるとは言い切れないと思います。
個人的な意見です。
えんきん開発の意図
えんきんについてあまり知らなかったので、
まず一番伝えたいだろうと思われる「ピント調節力」が書かれ
えんきん と言う商品名だけあって、
えんきんは50代以上の中高年の方から寄せられる、目の疲れ、
まず眼科関係者なら、
目の疲れ → 屈折および眼位矯正が不十分、またはドライアイ
視力の衰え → 白内障か網膜疾患
を疑いこれらの症状に対し対症療法をすると、網膜疾患以外は殆ど解消されます。
そんな中、評価の難しいサプリメントで挑むところは凄いと思います。
初代えんきんサプリの原著論文を研究者がガチ査読してみました
えんきんに限らずサプリメント系は開発した企業が病院に依頼して簡単な研究データをとってもらいます。
それで簡単な内容で論文化してもらいます。
そして簡単な研究によって得られた簡単なエビデンスをもって情報発信します。
サプリメントのデータはだいたいこんな感じです。
薬と違って厳密な研究結果は必要とされていません。
データの基になった原著論文
前置きが長くなりましたが、本題です。
原著論文はこちらになります。
PubMedに一応掲載されているジャーナルのようですね。
Free Download できるので興味のある方は読んでみてください。
Current Medical Chemistry というジャーナルを調べてみますと2015年のIFは3.455。
論文掲載で気になった点
論文成果は2015年8月に公表されているのですが、UMINへの臨床研究登録が2018年7月であるという事です(事後登録)。
医学雑誌に臨床試験結果を投稿する際、事前に試験情報の登録・公開を必須としています。
2004年9月に、International Committee of Medical Journal Editors(ICMJE)によって提唱されています。
論文のサマリー
論文を対象および方法、検討項目、結果の3つに抜粋してまとめてみました。
対象および方法
えんきんのサプリには以下の成分が入っているようです。
えんきんの成分
Lutein(ルテイン)10mg
Astaxanthin(アスタキサンチン)4mg
Cyanidin-3-glucoside(シアニジン-3-グルコシド)2.3mg
DHA 50mg
この4種が含まれたサプリメントを飲む群(サプリメント群)
中身には成分の入っていないサプリメントを飲む群(プラセボ群)
の2つにわけて、飲む前と飲んでから4週間後のデータを計測したみたいです。
最初 102人リクルートしたみたいですが、52人は採用基準を満たさなかったり除外基準に該当したため除外されました。
最終的に50人が対象となったみたいです(約半分が除外??)。
サプリメント群25人、プラセボ群25人とランダムに割り振ったようです。
検討項目
検討項目は以下の2つ
検討項目
① 調節近点の計測 KOWA NP accommodometer (Kowa Co., Ltd., Japan)
② 眼精疲労に関係しそうな15項目のアンケート(5段階評価)
15項目は以下の如くです。
アンケート15項目
1.眼精疲労
2.眼の痛み
3.ぼやけ
4.涙目
5.目の赤み
6.目がチカチカする
7.二重に見える
8.肩・首のこり
9.イライラ
10.頭が重い
11.頭痛
12.小さい字が見づらい
13.焦点が合いにくい
14.まぶしい
15.薄暗いところで見づらい
最終的に、両群ともに1人ずつ除外基準に該当したので解析から除外されたようです。
結果
論文には平均値と標準偏差がずらずら書いてあったので、以下のTable にまとめました。
また、有意差のあったものに関しては効果量と検出力を算出しました。
サプリメント群とプラセボ群で投与前後の調節近点の値を比較すると統計学的な有意差は認めなかったようです(Table 2)。
変化量にして比較するとサプリメント群は 1.321 ± 0.394 D、プラセボ群は 0.108 ± 0.336 Dであり、サプリメント群の方が有意に改善していたようです(p=0.023)。
一応検出力は1.000なのでこの差は有意でしょう。
ただ、ギリギリ差の出る解析を見つけた!といった印象を受けます。
アンケート項目では、以下の項目が改善したようです。
サプリメント群:眼の痛み、ぼやけ、肩・首のこり、頭が重い、焦点が合いにくいの5項目。
プラセボ群:眼の痛み、薄暗いところで見づらいの2項目。
Evidence levelはどれくらいか?
英語の論文になってるんだから凄いじゃん?と思った方はまだまだ修行が足りません。
僕は reject 含めかれこれ100回くらいは論文投稿して
また、Reviewerをやった事も50回近くありますが、一流雑
僕のような修行僧レベルでも二流三流雑誌から Reviewer の依頼が来るのです。
もし僕がこの えんきん の論文の reviewer だったら、m
おそらくこの記事をお読みの尊師達も原著論文を見ればそう思うは
驚くことに、この論文は
Received March 2 2015
Revised March 6 2015
Accepted March 7 2015
となっております。5日間でアクセプト!?
この論文はちゃんとした科学者によってReviewされていない可能性が高いです。
えんきん は薬ではなくサプリメントなので、厳重な臨床試験は必要ないと
しかし、”臨床試験済み” と大々的に宣伝するのなら、それなりの検証は必要かと思います。
今は”臨床試験済み”という文言は完全に消したようですがちょっとお粗末ですね。
以下で詳しく述べますが、 evidence level を個人的に言うと50%くらいかと思います。
“臨床試験済み” と言う言葉を使うのは誇張しすぎ
理由は以下の如くです。
ガチ査読のコメント
Major revisionの理由は以下の通りです。
①どの成分が効いたの?
4種の内容物が含まれていますが、この研究のデザインだと、どの
アスタキサンチンを考察で有力候補と上げていますが、プラセボ群
過去の報告ではアスタキサンチンは5~6mgが使用されていたようですが、今回の容量は4mgとやや少なめです。
尚更何が調節機能の改善に影響を及ぼしたのか分からないと思います。
②アンケートに信憑性がありません
被験者の自覚症状を聞いたアンケートは、項目によって被験者数が
なぜバラバラなのか理由も書いてないですし、統計処理をするには
科学的根拠が足らないことと、誤解をまねく結果なので削除すべき
③サンプル数が足りない
サプリメント群の投与前後の変化は検出力を評価すると臨床的に有意と言って良さ
ただ、サプリメント群(24人)とプラセボ群(24人)を比較するにはサンプル数が少
対応の無い2群を比較する際の事前計算では、
effect size 0.5(Medium)
α 0.05
検出力 0.80
で見積もると 最低でも各群51人ずつのサンプルサイズは必要になります(全体で102人)。
事後検定では検出力は1.000で出ているので、その差は臨床的に有意かもし
しかし、研究デザインとしてはこの検定は事前に考えていたとは考
なぜなら、前向き試験の場合、最初の recruit の段階で最低でも102人が必要であった場合、脱落症例を考慮して少し多めに見積もるからです。
本研究ではぴったり102人。なんか奇妙な数値です。
④ 被験者背景の基礎データが不十分
調節近点を計測するのが主要評価項目であるにもかかわらず、被験
これらは必須かと思い
⑤ 調節近点の計測条件などが一切書いていない
屈折の矯正状
計測時間帯は同じだったのでしょうか?
こういった自律神経系が大きく関与する計測は計測時間が影響して
少し細かいですが、瞳孔径も明視域に関係してくるので計測前の瞳孔径も必要か
⑥アンケート結果の捉え方が過大評価すぎる
5段階評価のアンケートですが、内服前のスコアは4~5、内服後のスコア3~4で統計学的には減っています。
しかし3を普通とすると、依然としてやや悪いスコアで決して満足度は高いわけではないと思います。
また内服前のスコアは全項目で4を超えていますが、全項目でこれほど自覚症状が悪いとなると健常ボランティアとは言い難いと思います。
こんな感じでしょうか。
さいごに
抗酸化物質のサプリメントなので、身体全体にはなにかしら良い方向に効きそうです。
ただ ピント調節力の改善になるかは、原著論文の科学的根拠が薄いので、
追加検証の大規模 study が今後行われる確率は極めて低い
この記事面白かった、役に立ったと感じた方は気軽にシェアしてください!
KazukunORTPhD、 hirachan_ort_phd、 留学先ハリファックスのブログ
ツイッターをフォローしてダイレクトメールをして頂ければ質問等にお答えします!